2011年09月30日

「風のバトン」第40話

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◆風のバトン
├第2章 In the Wind
└第40話
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女子のバスの中で蝶子は、すっかり忘れていたお弁当を取り出し呆然としていた。

正直、あまり料理が得意というわけではなかった。
でもみんなが張り切ってるのを見て、なんだかじっとしてられなくなって。
ほかの人が作ったお弁当を食べるとこなんて見たくないもの・・・

一念発起して本やサイトを調べて。
栄養とか、彩りとかがんばって考えたつもり。
それでも堀井さんが気に入ってくれるかどうか心配だった。

そんなにいろいろ悩んだお弁当を渡し忘れるなんて!
なんてドジなんだろう・・・
お弁当を手に、あたしは泣きそうだった。

そのとき、肩をポンと叩かれた。
振り返ると古田さんの笑顔があった。
「男子のバス、交差点で止まってるわよ。渋滞してるみたい」
ウィンクした古田さんの言おうとしてることに気づいたとき、あたしは立ち上がっていた。

「すみません、降ろしてください!」
無理はしないでね、という古田さんの声を背に、あたしはバスを降り走り出した。
お弁当を傾けないように気をつけながら。


順調に男子のバスに近づいていき、後もう少し・・・というところで。
信号が変わった。
バスが走り出す・・・!

「待って!」

とても馬鹿なことをしてるのかもしれない。
でもあたしが気持ちを伝えるには・・・
走るしかないんだ!

窓の中に堀井さんの顔が見えた。
ガラス越しの彼の顔が、驚いていた。
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2011年09月29日

「風のバトン」第39話−6

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◆風のバトン
├第2章 In the Wind
└第39話-6
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前田監督は深々と頭を下げた。

「と、とんでもないです、こちらこそ、こんなすばらしいグランドで、すばらしいナインを相手にさせていただき感謝しています。それからですね、堀井も投げますから」

「な、あいつまでもか?」

「ボールの速さ、フォークボールは・・・たぶん、・・・超一球品だと聞いています」

「そ、そうか、それは楽しみだな、よーし、うちのやつらを鍛えなおそうじゃないか。いや、鍛えてもらいたい」

品村は前田監督とがっちり握手をした。目指すは、高校の部、大学の部、ともに明治神宮大会の優勝である。

こうして、星緑院大学の面々は大学へと戻った。


一方の応援団である女子部員たちが帰りのマイクロバスの中で、未だ興奮冷めやらずというところか、その騒がしさは、これから先、大きな不安を抱かせるに十分だった。

「あ、お弁当・・・」
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2011年09月15日

「風のバトン」第39話−5

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◆風のバトン
├第2章 In the Wind
└第39話-5
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キン!


堀井のバットから金属音がこだました。

「きゃああああー、行けええええ、行けええ」

蝶子は他の誰よりも大声を出していた。

ゆっくりとグラウンドを一周する堀井の姿は、いつものランニングをするときのそれだった。

今井がホームランを打ったさいにやった、ソク転からバク転みたいな派手なことはやらなかった。


2回を投げた藤村に代わり、マウンドには木下が立っていた。外野の亀井がファーストに入り、藤村はライトを守った。

左腕、スリークオーター気味のフォームから繰り出される、速球と変化球には、左打者は何もできなかった。右打者はといえば、クロスファイヤーの気味で向かってくる球に体ごと引けてしまっている。

「あの男はピッチャーもやるのか、すごいやつだなあ・・・もっと勉強させたいが、時間だ、今日はこれまでにしてくれんか」

「あ、そうですね、ありがとうございました。」

「いや、礼を言うのはこちらだ、また明日も頼む。それどころか、競技会が終わったら、練習試合を頼みたい。何試合できるかわからんが、少しでも多いほうがいい。考えといてくれないか」
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